湯舟に浸かっていると、
いつも思い出す、思い出があります。
昔、よく父に連れられて箱根の温泉に行きました。
場所は「湯の里おかだ」。
サウナと露天風呂があって、
中は広い大浴場になっていました。
現在もありますよ。
露天風呂が特に広くて、
学校から帰ると何歳になっても、
突然、「おかだ」に行くぞって
連れ出されたものです。
父と一緒にお風呂に入ると、
世間話なんて一切しませんでした。
父も何も聞いてこないし、
私も父に何も聞こうとはしませんでした。
小さいころからいつも、
父は必ずサウナに入りました。30分位でしょうか。
何度も繰り返し、繰り返し入るのです。
それを見ると毎回、相当疲れているんだなぁと思ったものです。
小さい頃はお風呂が長いと退屈になったものでしたが、
ある程度歳をとってくると、
納得できるようになりました。
そしてひとしきり、
サウナに入ると、必ず露天風呂の階段を上がって、
また別の露天風呂に入るのです。
そこでやっと親子の会話がありました。
最近の出来事。仕事の状況等、長々とずっと話しておりました。
当たり障りの無い小休止。
殆ど父が話していました。
将来、社会人になったら気を付けないとならないこと。
今の仕事がいかに辛いか、でもいかに素晴らしいか。
今風で言うと「語っていました」
お風呂から出ると恒例の、
体重を測って二人で絶句するタイムです。
それが終わって待合室に行くと、
必ず、母と妹が待っていました。
「長いよ~」と二人口を揃えて言ったものです。
でも父はいつも必ず、ハーゲンダッツを買ってくれました。
いつもは妹と私だけでしたが、
たまに家族四人で横に並んでみんなで、
ハーゲンダッツを頬張るのです。
とても幸せな時間でした。
味が違うアイスをみんなで交換して食べ合う。
家族でこんなに幸せな時間はないと思います。
アイスを食べ終わると、お会計の時間です。
会計場所の前に牛乳が売っていて、
父と母は必ずそこでコーヒー牛乳を買ってくれました。
今でも自分で買うことはありますが、
あの時にいつも飲んでいたコーヒー牛乳に勝るものは無いでしょう。
たくさんあるうちの家族の思い出の一つです。
父の思い出をこうも長く、書くということは、
私はまだ父の死から立ち直れていないのでしょう。
正直、自分でもまだ立ち直ってないと思います。
彼女がいなければ、もっと酷い状況だったかも。
でも思うのは私が将来、家族ができたら、
同じことをしてあげようと思うのです。
最高の彼女と最高の家族を作り、
父と母が作った最高の家族を超える家族を
作る。
それが今の私の目標です。
よろしくな、彼女。